妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「お兄ちゃん、久しぶりだね。元気だった?」
「そこまで久しぶりじゃないだろ? いつまで経っても甘えん坊だな」
「やめてよ」
小馬鹿にされたためじろりと睨み付けても、兄はお構い無しだ。
そしてソファーに腰掛けると同時にテレビをつけ、映し出されたバラエティ番組を指差して陽気に笑っている。
恭介君はその様子にわずかに肩を揺らしながら、兄がローテーブルに置いたお酒の缶を掴み取った。
つい数秒までは深刻そうに見えたからどうしたのか不安にもなったけれど、ふたりの緊張感のない様子に拍子抜けする。
心配して損した。
そんな想いにかられながら、私はキッチンへと向かった恭介君を追いかける。
手にしていたお酒を飲み干し、兄が飲んでいた缶の隣へと恭介君が並べ置いた時、兄から「もう一本!」と声が上がる。
苦笑いして「もうそれくらいにしておけ」と冷静に返した恭介君へと私は話しかけた。
「お兄ちゃんは、けっこう飲んだみたいだね」
「店ではそんなに飲まなかったけど、家に帰ってきた途端あれだ。速いペースで飲んでたから、悪酔いしてそうだ」
打って変わって、ソファーに横たわる兄に先ほどまでの陽気さはない。