妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
無表情でテレビを見つめるその様子は、何かに思い悩んでいるようにも見えた。
これまで兄とお酒を飲む機会は何度かあった。
しかし、いつも自分に合ったペースで飲んでいたため、こんな風に辛そうな状態の兄は初めてだ。
嫌なことがあってやけになっていたのだろうか。
そう考えると、すぐ思い浮かぶのは叔父さんの顔だ。
叔父と言い争いでもしたというなら、その原因が私であったとしてもおかしくない。
そうならば、恭介君の腕の中でぬくぬくと暮らしているのが申し訳なく思えた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「平気だからしばらく放っといてくれ」
とうとう両手で目元を覆い、再び呼びかけてもなにも喋らなくなった兄に対して、恭介君は小さく息をつき、動き出す。
書斎から持ち出したブランケットを、そのままどさりと兄の上に置く。
「今日は泊まっていけ」
「は? 平気だって。ちゃんと帰れる」
驚いて身を起こそうとした兄を、恭介君が手荒にソファーへと押し戻した。
「いいから、明日の朝までここで大人しく寝てろ」
「私もそうして欲しい! 寝心地悪いなら遠慮なく言って、お布団敷くから」