妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「あぁそれがいい。そうしよう」
悪巧みをこそこそ言い合ううちに楽しくなってきてふふっと小さく笑う。思いを共有するかのように彼も口元に笑みを浮かべた。
人によっては冷たい印象を持たれる恭介君だけれど、私は彼の隣にいると安心する。もう一人の兄みたいな存在なのだ。
この再会を機に、また昔のように仲良くしたい。
そんな願いを心に抱いた時、私を見つめていた彼の表情が真剣そのものへと変わっていった。
「これからは俺の予定なんて気にせず、会いたいと思うたび連絡してくれていい。何度だって付き合うから」
彼がくれた本気の言葉に、鼓動がとくりと跳ねた。
真面目に言っているのにどこか甘くて、胸の奥がきゅっと苦しくなる。はにかみながら「うん」と頷き返した。
「あらやだ。恭介、いつの間に帰ってきたのよ」
晶子先生の声が響き、ハッとする。
両手にクッキーと紅茶が乗ったトレーを持ち、右腕に小さな紙袋を下げた格好でレッスン室へと入ってきた晶子先生のポカンとした顔に、恭介君が肩をすくめた。
「帰ってきた訳じゃない。本社に向かってたところで大和から連絡もらって、美羽の顔を見に立ち寄っただけ」