妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
確かに、この状態のまま兄を家に帰すのも不安である。
恭介君に続いて私もそうお願いすると、ブランケットを払い避けようとしていた兄が困り顔で動きを止めた。
そして置き時計へと目を向け、体から力を抜く。
「迷惑だろうけど、そう言ってくれるなら今日は泊まらせてもらうわ。すげー眠い」
言い終えると、兄が大きなあくびをした。
そのままブランケットを自分の体に掛け直し、気だるくため息もつく。
やっぱり叔父になにかひどいことを言われたんだろうか。
兄のため息ひとつで、心配な気持ちが膨らんでいく。
恭介君が私の隣に戻ってきて、コップに水を入れた。
それを飲み干すのを見つめながら、彼なら兄からなにか聞いているかもと考える。
しかし知っていたとしても、事細かに教えてくれるだろうか。
きっと彼なら、叔父の辛辣なセリフは曖昧な言葉で包み込んで、詳細までは語らないだろう。
気になるけれど、聞くのは後にした方がいいかもと無理やり納得し、私は違う話題を持ちかける。
「そう言えば、今日はお義父さんも一緒だったの?」
ほんの数秒、恭介君が目を大きくし動揺したような素振りを見せたが、すぐに「あぁ」と首を縦にして認める。