妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

今夜仕事をするつもりでいたのなら、恭介君は付き合い程度しか飲んでないだろう。

改めて、並べられたお酒の空き缶を数えてしまう。

目の前と、ダイニングテーブル上にあるのを合わせて、全部で六本。

そのうち一本は恭介君で、残りはきっと兄が飲んだものだ。

無茶な飲み方に、やっぱり何かあったのではと不安を覚える。

会社で叔父に強くあたられたか、それともお義父さんとの食事の席でなにか言われたか。それとも私のただの気にしすぎか。

恭介君は書斎に篭ってしまったし、兄からはすでに小さな寝息が聞こえてきている。

ヒントすら得ることのできない問題の答えをひとり想像するしかなく、感じる物悲しさに小さくため息をついた。



そんな記憶も忙しさとともに薄くなる。

自分の夢を叶えるため、そして恭介君の思いを無駄にしないようにとピアノの練習に励み、三ヶ月が過ぎた。

少しでも多くの時間をピアノと向き合っていたくて、仕事が休みの時もアザレア音楽スクールを訪ねては部屋が空いていたらピアノを自由に使わせてもらっている。

今日もそうだ。

これから夕方に石田教授の元に習いに行く予定なのだが、その前に少しだけでもとピアノの練習をしている所だ。

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