妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
それに違和感を覚えるのと、兄が「……なるほどね」と呟いたのはほぼ同時だった。
「ともかく、まだ答えを出すのははやい! お付き合いから初めたって良いんだ。少し考えてみてくれ」
嫌な沈黙に包まれ、状況を打破するように叔父が明るく言葉を並べる。
期待に満ち溢れて目を輝かせている叔父、俺を選ぶのは当然だと思っているかのような高志さんのすました眼差し、そして呆れ顔の兄。
それぞれを順番に見つめ返してから、仕方なくこくりと頷く。
「……分かりました。少し考えさせてください」
それが私が思いつく、一番手っ取り早く場を収められる言葉だった。
料理を食べ終えてすぐに、私は兄と共に店を出た。
気疲れし言葉もないままホテルの地下駐車場へと降りていく。
助手席に乗り込み、大きく息を吐いて肩の力を抜く。兄に話しかけようと運転席へ目を向けると、何か言いたげな視線とぶつかった。
「先に言っておくけど、私は高志さんと結婚する気なんてないからね!」
「当たり前だ! 高志に可愛い妹はやれない!」
父親の心境での兄の発言に思わず乾いた笑いを響かせつつも、私は「でしょ?」と調子を合わせて相槌を打つ。