妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

両親が亡くなったあとは、ふたりで生きてきた。

兄として、時には父親代わりとして、彼が私の傍に居てくれたのは紛れもない事実だ。


「でも、あいつらはしつこいぞ?」

「大丈夫よ。そのうち社長令嬢とのお見合い話が飛び込んできて、この前の話はなかったことにするとか言い出しそう」


そもそも、なぜ私に話を持ちかけたのか。いくら考えても理由は見つからない。

しかし兄にはなにか心当たりがあるようだった。


「それはないな。あのふたりは美羽に価値を見出したから」

「私に価値?」


余計分からなくなりしかめっ面の私に、兄が小さく微笑みかけた。


「高志が言っただろ? 俺を支えるのが美羽なら、周りも祝福するしかなくなるって。周りっていう言葉が、父さん派の人たちを指しているとしたら?」

「……つ、つまり?」

「叔父は今、自分の跡を高志に継がせようと躍起になってるんだ。その足がかりとして副社長の次期候補に高志を推していて、そのことで父派の人間とぶつかり合ってる」


羽柴コーポレーション内で起きていることは何も知らない。

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