妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
父派の人たちと衝突しているとなれば、兄も巻き込まれていたとしてもおかしくなく、蚊帳の外にいるしかない自分に歯がゆさを募らせる。
沸き上がった不安と心配の思いが伝わったかのように、兄も少しばかり表情を曇らせて「実は」と続けた。
「美羽の不採用の一件から、叔父への不信の声が上がり始めてて、今また高志を強引に副社長に就かせようとし始めたから余計に反発が強くなっていて。それに加えて、前社長の息子の俺を副社長にと推す声も上がり始めたから、焦ったんだろう」
兄の考えをそこまで聞いて、私の中でまさかという感情が膨らみ出す。
「事態を打開すべく、美羽に結婚の話を持ちかけたんだと俺は思う。美羽が高志と結婚することで不採用の件は影が薄くなり、おまけに副社長の座を巡り俺と対抗する手段としても利用できると考えたのでは」
使えるかもしれないから自分たちの手の内に私を引き込んでおこうなんて、まさに叔父が考えそうなことだ。
「不満は残るが、まぁそのうち叔父の跡を継ぐのは高志に決まるだろう。そうしたら自然と結婚の話もなくなるだろうから、それまでの辛抱だ。頑張って逃げろよ」
「そっ、そんなのまだ分からないじゃない!」