妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「驚かせてしまったようだな。でも許してくれ。俺は金曜日まで我慢できそうにない」
「……いったいなんの話?」
「美羽がもっと驚くだろう話だ」
「だからそれはいったいなに?」
繰り返し問いかけても、彼は微笑むに留めるだけで、何も教えてくれない。
そこから十五分ほど車を走らせた所で駐車場に車を停めて、私は恭介君と一緒に都内でも屈指の広さを誇る自然公園へと足を踏み入れる。
並んで歩道を進むと、やがてキラキラと湖面を輝かせた池が見えてきて、そのほとりでやっと彼の足が止まる。
池の周りには木々が生い茂っていて、豊かな自然が気持ち良い。視線を遠くへ伸ばすと、木々の向こう側には空に向かって都心の高層ビル群が建ち並んでいる。
対照的なコントラストを視界に宿してぼんやり見つめていると、そっと隣に並んだ恭介君の気配を感じ、私は彼に笑いかける。
「始めて来たけど、素敵な場所ね」
「あぁ。俺もここは好きだ」
池をじっと見つめていた恭介君の瞳が、私がそっと腕を掴んだことでこちらへと向けられた。見つめ合いながら、静かに問いかける。