妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
高志さんは兄と同い年で三十歳、私とは三歳離れている。
年の近い従兄弟であっても、時々見せる高圧的な態度が鼻に付き、必要以上に交流を持たなかった。
そのため、高志さんとは気軽にお喋りする関係ではない。
叔父に対してもわだかまりがあり距離を置いているというのに、そんなふたりと食事だなんて考えただけでも息がつまる。
だから兄がそばにいてくれるととても心強いのだけれど、巻き込んでしまったことに関しては申し訳なく思う。
私同様、兄にとってもふたりの存在は目の上のたんこぶみたいなものだからだ。
叔父から兄に連絡が行くよりも先に、謝っておこう。
「俺を巻き込むな」とぼやかれることを覚悟して、握りしめていたスマホへと再び視線を落とした瞬間、また着信音が鳴り響く。
驚きは、相手の名前を目にして喜びへと変わっていく。
「はい!」
私は声を弾ませて電話を受けたのだった。
久しぶりの駅で降り、はやる気持ちを抑えきれないまま見知った道のりを進んでいく。
しかし途中でハッと思い出し、スマホをバッグから引っ張り出す。兄に連絡するのをすっかり忘れていた。