妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「今日はどうしたの? なにかあった?」
「あぁ。朝、大和と電話で話したんだ。それからずっと気が気じゃなかった」
「お兄ちゃんと? ……あっ。今朝、金曜日恭介君とデートするって話して、俺も一緒に食事したいって言われたんだけどヤダって断っちゃったんだよね。もしかして、それでなにか理不尽なことでも言われちゃった?」
兄は父親代わりであろうとするゆえに、私のことを心配しすぎる節がある。
さらに私に断られたのも仲間はずれのようで面白くなく感じていたとしたら、兄が恭介君に電話で愚痴や嫌味を言ったとしてもおかしくない。
それで金曜日のデートが憂鬱になってしまったのだろうか。私は楽しみにしていたから断られるのは寂しい。
お願いだからそんなことにはなりませんようにと祈りを込めて恭介君を見つめ続けていると、ゆっくりと彼が口を開いた。
「確かに大和から理不尽な話を聞いた。この前の食事会で、従兄弟との結婚話がでたらしいな」
「え? ……あぁうん。そうだけど」
飛び出した意外な言葉に面食らいつつもそれを認めた瞬間、両肩をガシッと掴まれた。見つめ合う視線の距離が一気に短くなり、思わず息をのむ。
「返事はまだしていないよな?」
頭の中が真っ白の状態で、私はぎこちなく何度も頷き返した。