妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
二章、想いの道しるべ

迎えた金曜日。

恭介君と食事を予定していたフレンチのお店へ、私は兄の運転する車で向かっている。


「ねぇ。本当に恭介君がお兄ちゃんも来て良いって言ったの?」


納得できなくて再び問いかけた私を、兄がじろりと睨みつけてきた。


「さっきから何度もそうだって言ってるだろ? 信じられないなら直接恭介に電話して聞けよ」


信じられないというよりも、信じたくないというのが正直な気持ちだ。

仕事が終わったら、アオト株式会社近くのカフェで待っていてくれと、前もって恭介君から言われていた。

そのため私は心を弾ませながらカフェの窓際の席で恭介君を待っていたのだが、......なぜか兄が目の前に現れたのだ。

驚く私に、兄は「仕事の予定が変わって、恭介は出先から直接店に行くらしい。だから美羽は俺が乗せていく」と説明する。

恭介君が迎えに来れなくなって、代わりに兄が送ってくれるのなら、不機嫌になる理由はない。

逆に運転手をしてくれる兄に感謝すべきだと気づき、すぐに「お兄ちゃん、ありがとう!」と態度を一変させたのだが、車に乗り込んだ後、改めて話を聞き、急速にテンションが下がっていった。

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