妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「……あ、お兄ちゃん? 今夜のことなんだけど、叔父さんから聞いた?」
「聞いたよ。食事のことだろ?」
「ごめん。巻き込んじゃった」
歩きながら、電話の向こうで渋い顔をしているだろう兄に頭を下げた。
「それは別にいいけど。……お前、呼び出された理由は聞いたか?」
「理由?」
やっぱりそんなものがあったのかと、ほんの数秒足が止まる。
叔父が私を食事に誘った理由。どれだけ考えてもその理由は見えてこない。
「黙ったってことは、聞いてないみたいだな」
「その言い方、お兄ちゃんは知ってるの? 一体なに?」
「それは今夜分かる。とにかく、今回ばかりは俺を巻き込んで正解だったかもな。必要なら俺に助けを求めろ」
兄の言葉が真剣で、自分で考えている以上に叔父の思惑が深いのかと背筋が寒くなる。
「なっ、なにそれ。怖いんだけど! 教えてよ!」
「いや。結局俺も予想でしかないから。余計なことは言わないでおく」
心の準備をしたくて理由を問いかけても、兄にさらりと拒否された。「お兄ちゃん」と泣き言のように呼びかけると、笑いながら兄が続けた。
「食事は夜七時半からだから、それに間に合うように迎えに行く。家にいるか?」