妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
新たなステップのスタートラインを三十歳と決めていて、その日を迎えワクワクしているというのなら微笑ましい。
私の問いかけに恭介君はこくりと頷く。
何をするのか知りたくてさらに質問しようとした時、恭介君が意味ありげな視線を兄に向けた。
兄も動揺したように視線が俯きがちになっため、男ふたりの一連の動作に私はほんの一瞬口ごもる。
「お兄ちゃんは知ってるみたいだね。私にも教えて」
「俺は知らない! 何も聞いてないし心当たりもない! ......だから、美羽も知らなくていいんじゃないかな」
食い気味に兄に否定され面食らうが、すぐに反発心が湧き上がる。
兄が知らないのならそれでもいいけれど、だからとって、私まで知らなくていいなんて言われたくない。
しかし、身の内で沸き上がった不満は、恭介君の次のひと言で動揺へと変化する。
「親父から常々言われている言葉がある。二十代は仕事にのみ邁進、結婚を視野に入れるのは三十を越えてから。俺も無事、結婚を意識しても良い年になったと言うわけだ」
恭介君の口から「結婚」というワードが飛び出した途端、そわそわと落ち着かなくなる。