妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
微笑ましい気持ちは、続いた会話と、兄が両手で豊満な女性の体のラインを描いたことによって一気に吹き飛んでいった。
そんなことを父が恭介君にお願いしていた光景は、薄っすら覚えている。
私が見たのは一回だけだが、ふたりの言葉からあの光景は繰り返し行われていたということになる。
うんざりしていないと言ってはくれたけれど、大なり小なり恭介君に迷惑をかけていたのは間違いないように思えた。
久々に父に対して恨めしい感情を抱き、兄からの馬鹿にしたような発言にむっと膨れっ面をする。
しかし、恭介君は兄に対して不敵な笑みを浮かべた。
「悪いな。美羽以外の女が目に入らないんだ。義兄さん」
続けて私に温かな眼差しを向ける。
彼の瞳に捕らわれると同時に心が穏やかになっていったが、膝の上にある私の手に大きな手がそっと重ねられ、どきりと鼓動が跳ねた。
思わず恭介君を見たが、彼はあくまで平然としている。
「やめろ! さらっと甘い言葉を吐くな。ついでに俺を兄と呼ぶな! そもそも、美羽はど
うなんだよ。恭介からのプロポーズをOKしたのか?」