妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

彼の表情にわずかに翳りが生まれた気がして、ちくりと胸が痛んだ。

恭介君は好き。

人として尊敬もしているし、辛い時にずっと支えてくれていたから感謝の気持ちも大きい。

学生の頃、年上の女性と恭介君が一緒に歩いている姿を偶然見かけて、面白くない気持ちになったことも正直何度かある。

でもそれが、彼を男性として意識して生まれた嫉妬だったのか、それとも、もうひとりの兄として心の拠り所にしている彼を失いたくないという心の弱さからだったのか、答えが出せなかった。

そして、そんな思いを私はまだ引きずり続けている。


「自分の気持ちがまだよく分からないの。こんなあやふやな気持ちで、指輪は受け取れない。......でも、ちゃんと答えは出すから、もう少しだけ待ってほしい」


数秒目を閉じて、己の鼓動を強く感じとる。

恭介君のそばにいたら、遅かれ早かれ答えはしっかり見えてくる気がした。

続けて、言葉だけでなく目でも訴えかけると、少し強引に手を引かれ、腰を引き寄せられた。

至近距離に迫った整った顔に思わず息をのむ。


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