妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

続けて入り口付近を気にしつつ、晶子先生に問いかける。


「今日って恭介君は......」


顔を出しませんか?

その部分が喉に引っかかって出てこない。

まだ今日は恭介君に会ってない。

彼は代表だからきっと様子を見に顔くらい出すだろうとは思っているけれど、彼の代理として場を仕切っている男性がいるため、ここは彼に任せ恭介君は来ないのではないかとなんだか落ち着かないのだ。

晶子先生は私の顔を見て言葉の続きが分かったのだろう。「あぁ、恭介ね」と困り顔で言葉を濁した。


「なにかトラブルがあったみたいで、朝一で本社に向かったわ。片付いたら来るとは思うけど、どうかしら。連絡も来ないし、もしかしたら難しいかもしれないわね」

「そうですか」


笑みを浮かべて短く返しながら、ひどく動揺している自分に驚く。

手が小刻みに震えている。

ピアノの発表会をはじめ、学校行事など、これまで人前でピアノを弾くことは多々あった。

その度緊張はしたけれど、それをも楽しむ余裕が自分にはたしかにあった。

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