妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
だから、これほどまでに緊張が大きく膨らみ、不安が恐怖にまで変わりそうになるのは初めての経験だった。
「美羽ちゃん、大丈夫? 時間まで、奥のスタッフルームで休んでいてもいいわよ」
「へっ、平気です。お手伝いできることがあったら言ってください。なんでもしますから」
気遣われてしまい、私は慌てて首を振って否定する。
みんなが忙しく動いている中で、自分だけが何もしないでいる訳にいかない。
外から店内にバルーン片手に入ってきたスタッフが「すみません。手が空いている人はいますか?」と問いかけてくる。
すぐさまそれに「はい!」と返事をして、私は晶子先生のそばを離れた。
まだ何も始まっていないというのにこんな状態で役目を果たすことができるのかと、自分が情けなくて唇を噛んだ。
外でスタッフを手伝いつつなんとか気持ちを落ち着かせる。
ついでにチラシ配りまで手伝いながら、手の震えが治ったことに気付きもう大丈夫だとホッとしたのも束の間、晶子先生が私を呼びに来たことで再び体の中がざわつき始める。