妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

とても力強くて、力が湧いてくる。言葉に背中を押され、気持ちも前を向き始めた。

彼の存在は、自分で思っていた以上に大きかった。思いも、確信に近い形で強くなっていく。

私は、この人じゃないとダメだ。彼を失いたくない。

ステージの方から「羽柴さん」と司会の女性に呼びかけられ、「はい!」と返事をする。

そして改めて恭介君を見上げた。


「頑張る。だからちゃんと私を見ていて」


今日一番、明るく張りのある声で伝えると、恭介君が微笑みかけてくれて、それもまた私の力に変わる。

最後にきゅっと手を握りしめて、私はステージに向かって歩き出した。

ミニコンサート開演の時刻は、あっという間にやってくる。

想像以上にたくさんの人々が集まった中、鍵盤に指を走らせた。

奏でられる曲を知っていると子供たちの顔が輝き出す。

そしてあわせて歌ってくれる子が切っ掛けとなり子供達の可愛らしいハーモニーが生まれ、私も含め大人たちに笑顔が広まる。

不思議なくらい緊張はしなかった。

他の演奏者たちに気負うこともなく、逆にみんなと一つになるかのように流れ行く旋律に没頭する。

十五分ほどでミニコンサートを終えると、興味を持って近づいてきてくれた子供達に、鍵盤に触れてもらったりと、スケジュールは順調に進行していく。


「ねぇ、お姉ちゃん。あの曲知ってる? 弾ける?」


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