妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
送ってくれるという恭介君の言葉に甘えて、今は彼の車の中。
通りすがりに聞こえた音楽に足を止め立ち寄ってくれた家族連れが多かったことを聞き、ほっと胸をなでおろしつつ、自分に声をかけてくれたことへの感謝の言葉を繰り返した。
それから、子供たちの輝く笑顔を間近に見て感じたことを興奮気味に語り、それに恭介君が相槌を打ちながら言葉を返し、私を褒めてくれたりもした。
今回のイベントを手伝えて本当に良かった。
充実感で胸がいっぱいだからテンションも高くなっているのだけれど、......それだけじゃない。
私の暮らすマンションの前で車が止まり、勇気を振り絞る。
「恭介君。あの......」
深呼吸してから、運転席から不思議そうに私を見つめる恭介君へと顔を向ける。
「今日のイベント、声をかけてくれて本当にありがとう。それで......」
緊張から車の中で既に何度も口にした感謝の気持ちをまた言ってしまった。そんな私に恭介君が苦笑いする。
「どうした?」
「気づいたと思うけど、今日の朝、不安でたまらなかったの」
「あぁ。ついでに、俺がいなくて寂しくもあったんだよな?」
茶化すように付け加えられ言葉を、頷き認める。
「その通りだよ。恭介君がいなくて寂しくて、すごく心細くて不安だった」
彼はほんの一瞬目を大きくするも、すぐに表情を朗らかにさせた。
「そうか。間に合って良かった」