妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

心の底からだと分かるほど嬉しそうに響いた声音に、心が震える。

ハンドルに触れたままの恭介君の手の上へ自分の手をそっと重ね置いた。


「恭介君が触れてくれたから、落ち着きを取り戻せたの。あなたは私の心の支えで、誰よりも大切な人。恭介君のそばにいさせて」

「それって、もしかして」

「......わ、私で良ければ、結婚してください!」


不安から救い出してくれた時、恭介君が好きだと強く思った。

彼と一生を共にしたい。彼を失うのだけは絶対に嫌なのだ。

言葉を発さぬまま、ただ真顔で恭介君に凝視され続け、徐々に居た堪れなくなっていく。

何か言って欲しい。そう願っても、なかなか恭介君の口は開かない。

あまりにも無反応なため、小さな不安まで芽生え出す。まさか保留にしすぎたため、心変
わりをしてしまったとか。


「お、お休みなさい!」


不吉な予想から逃げたくなり、勢いよく彼に背を向ける。

しかし、ドアを開けることはできなかった。恭介君に腕を掴まれ、引き寄せられたからだ。


「この状況で、俺を置いて逃げる気か?」



< 95 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop