妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
彼に至近距離で微笑みかけられ、その美麗さに頬が熱くなる。
直視できないまま、もごもごと反論する。
「だって恭介君なにも言ってくれないから、てっきり気持ちが変わったのかと」
「そんなわけあるか。こんなに嬉しくてたまらないのに」
ちらちらと疑いの眼差しを彼に向ける。
さっきまでは表情から感情を読み取れなかったけれど、今は違った。珍しく口元は綻んでいるし、頬も微かに高揚している。
喜んでいると分かりホッとした瞬間、彼の手が私の頬に触れた。
見つめ合い、鼓動がうるさく響く中、ゆっくりと互いの距離が短くなっていった。
唇が重なり合う。
柔く食むように何度も口づけを交わし、体を熱くさせていく。
私から甘い吐息が漏れ落ちるその時を狙っていたかのように、恭介君の唇が荒々しく姿を変え
た。
獣のように本能をむき出して、深く繋がり合おうとする口づけに翻弄される。
ただただ受け止めるだけで精一杯だというのに、心の奥底が喜びで震えているのだけはしっかりと感じ取れた。
「伝わった? 俺の気持ち」
甘く焦らすように囁きかけ、薄っすらと濡れている己の唇をぺろりと舐めてみせた。
色香にあてられ言葉が出てこない。
乱れた呼吸を整えるしかできない私を見て、恭介君が艶っぽく笑う。