妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~

彼に至近距離で微笑みかけられ、その美麗さに頬が熱くなる。

直視できないまま、もごもごと反論する。


「だって恭介君なにも言ってくれないから、てっきり気持ちが変わったのかと」

「そんなわけあるか。こんなに嬉しくてたまらないのに」


ちらちらと疑いの眼差しを彼に向ける。

さっきまでは表情から感情を読み取れなかったけれど、今は違った。珍しく口元は綻んでいるし、頬も微かに高揚している。

喜んでいると分かりホッとした瞬間、彼の手が私の頬に触れた。

見つめ合い、鼓動がうるさく響く中、ゆっくりと互いの距離が短くなっていった。

唇が重なり合う。

柔く食むように何度も口づけを交わし、体を熱くさせていく。

私から甘い吐息が漏れ落ちるその時を狙っていたかのように、恭介君の唇が荒々しく姿を変え
た。

獣のように本能をむき出して、深く繋がり合おうとする口づけに翻弄される。

ただただ受け止めるだけで精一杯だというのに、心の奥底が喜びで震えているのだけはしっかりと感じ取れた。


「伝わった? 俺の気持ち」


甘く焦らすように囁きかけ、薄っすらと濡れている己の唇をぺろりと舐めてみせた。

色香にあてられ言葉が出てこない。

乱れた呼吸を整えるしかできない私を見て、恭介君が艶っぽく笑う。

< 96 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop