卒業まで100日、…君を好きになった。
恐い。お父さんが恐い。
人が変わったような拓が恐い。
ふたりに拒絶されるのが何より恐い。
「そうだね……」
「平くんも、恐い?」
「少し」
お守りを握りしめ、平くんがこっちを見た。
メガネの奥で、切れ長の瞳が微笑んだ。
「ゆっくり行こうよ」
「え?」
「ひとりだと恐いかもしれないけど、ふたりならきっと――」
大丈夫。
呟きは白い息とともに、夜に溶けて。
わたしはそれを心ですくい、自分の中にそっと、染みこませた。
平くんの言葉はいつも、胸に直接響いてくる。
そんな言葉をつむぐ彼をいますごく、改めて、素敵だと思った。
「一緒に、がんばるってこと……?」
「仲間じゃん」
「そっか……ふふ。なんか大丈夫な気がしてきた!」