卒業まで100日、…君を好きになった。
教えてくれる時にノートをさす指の、その先にある爪の柔らかな色は見飽きることがなかった。
難しい問題が解けた時、ほめるみたいにして向けられた微笑みは、いまもわたしの心のアルバムに、色鮮やかに残っている。
***
「優しい人だよね……」
兄の平くんもとても優しい人だけど、弟の平くんも同じくらい優しい人だった。
テストが終わって図書室に行くこともなくなってからは、言葉を交わすこともなくなって。
教室では相変わらずわたしにとって、遠い人だった。
そして遠い人のまま、クラスが変わってそれっきり。
わたしの淡い恋も、花が咲くことなくゆっくりと土にかえっていった。