卒業まで100日、…君を好きになった。
「しない?」
「う、うん」
「そう」
平くんはほんの少し、歩調を早めた。
広い背中を見つめて不安になる。
ちゃんとわかってもらえたんだろうか。
勘ちがいされてないだろうか。
わたしが好きなのは、きみなんです。
そう口に出して言ってしまえたらいいのに。
「よかった」
前を行く平くんが、不意に呟いた。
ぽろりと漏れたような小さな呟きだった。
「え、あの。良かったって、何が?」
「うん」
くるりと身体を反転させて、平くんはこっちを向きながら後ろ歩きする。
ポケットに手を入れたまま歩くから、転ぶんじゃないかってハラハラする。
そんなわたしの心配をよそに、平くんは笑った。
「春川さんが聡と付き合わなくて、良かった」
「……へっ?」
「ほんと、良かったよ」