卒業まで100日、…君を好きになった。
自分の手が震えていることに気付く。
だって、あんな拓、はじめてで。
ちょっと前までは穏やかで、わりと大人びていて、姉のわたしよりしっかりしてる、なんて言われるような子だった。
こんな乱暴なことをするなんて。
あんな恐い顔で怒鳴るなんて。
小さい頃から仲良し姉弟で、わたしは誰より拓のことを知っているつもりだった。
でも……
いまはもう、拓のことがよくわからない。
受験が終わったら、きっと元の仲の良い兄弟に戻れる。
そう思っていたけれど、そんな簡単なことじゃないのかもしれない。
ようやくそう、思い至った。
別人になったような弟にとってたぶん、わたしはもう姉ではなくなってしまった。