雪降る夜は君に会いたい
晴れた空を見上げながら雪実は言った。
紅葉が美しい街路樹を背にした雪実の姿は、それに負けない程の存在感があった。肌寒く感じる風が長い髪をなびかせては耳にかける仕草に俺は見とれてしまった。
ふとした瞬間、雪実があやかしであることを忘れてしまって時が止まる感覚に陥る。
時に美しく時に可愛らしく。
あやかしである雪実に心を閉ざした俺と、あやかしであっても美しいものは美しいと思える俺が常に混ざり合う。
その瞬間の感情が正しいのかどうかわからなくなるけど、間違いなく言えることは……。
「雪女って月からやって来たって説があるのよ」
「ホントかよぉ?」
「そりゃ数ある説の一つだけどね。けどロマンチックじゃない、月からやって来ただなんて」
空を見上げたまま両手を合わせて乙女チックに揺れている。少女漫画だと目がお星さまになっているシーンなんだろうかそれともバックに薔薇の華が咲いているのか。
「けど月にはウサギがいるんだぞ」
「そのウサギも真っ白だし、きっとお月さまには身も心も真っ白じゃないと生きていけない純粋なる約束の地なのよ」
「ホントはウサギも居ないし、酸素が無いから居てもすぐ死んじゃうね」
振り向いた雪実の顔は悲しそうに怒った表情でなんとも器用というか情緒不安定なのだろうか。
「お兄ちゃん! 全っ然ロマンチストじゃないのね!」
「いや、だから現実をだなぁ」
「わかってるよそんな事! せっかくヲタクなのにそんなところだけ現実的になってどうすんのよ! 毎日二次元に夢中になって『誰それは俺の嫁』とか言って毎晩枕抱きしめているんでしょ! 一番現実世界に遠い夢追ってるのがヲタクなんだからちょっとはロマンチックにも脳味噌使いなさいよ!」
俺の襟足を掴んで揺さぶりながらある意味罵声を浴びせてくる。
「脳震盪なるわ」
危うく目の前が白くなりそうなところで止めてもらう。常日頃から冷めた目で世間を見てる心だからロマンチックな感情が芽生えてこないのだろうか。会社でも何処でも人付き合いは得意ではなく、出来れば極力人との関わりは少ない方が好ましいとさえ思っている。
人に気を使うのも使われるのもストレスの元なのだ。だからアニメを観ている時はその作品の事だけを独りで考えていれば良いのだから、引きこもりではないが他との接触を遮ってしまいがちになる。アニメを観ることがヲタクと呼ばれる要因ではあるがそのことによって思想も独りよがりになり冷めた考えが多く生まれるということか。
紅葉が美しい街路樹を背にした雪実の姿は、それに負けない程の存在感があった。肌寒く感じる風が長い髪をなびかせては耳にかける仕草に俺は見とれてしまった。
ふとした瞬間、雪実があやかしであることを忘れてしまって時が止まる感覚に陥る。
時に美しく時に可愛らしく。
あやかしである雪実に心を閉ざした俺と、あやかしであっても美しいものは美しいと思える俺が常に混ざり合う。
その瞬間の感情が正しいのかどうかわからなくなるけど、間違いなく言えることは……。
「雪女って月からやって来たって説があるのよ」
「ホントかよぉ?」
「そりゃ数ある説の一つだけどね。けどロマンチックじゃない、月からやって来ただなんて」
空を見上げたまま両手を合わせて乙女チックに揺れている。少女漫画だと目がお星さまになっているシーンなんだろうかそれともバックに薔薇の華が咲いているのか。
「けど月にはウサギがいるんだぞ」
「そのウサギも真っ白だし、きっとお月さまには身も心も真っ白じゃないと生きていけない純粋なる約束の地なのよ」
「ホントはウサギも居ないし、酸素が無いから居てもすぐ死んじゃうね」
振り向いた雪実の顔は悲しそうに怒った表情でなんとも器用というか情緒不安定なのだろうか。
「お兄ちゃん! 全っ然ロマンチストじゃないのね!」
「いや、だから現実をだなぁ」
「わかってるよそんな事! せっかくヲタクなのにそんなところだけ現実的になってどうすんのよ! 毎日二次元に夢中になって『誰それは俺の嫁』とか言って毎晩枕抱きしめているんでしょ! 一番現実世界に遠い夢追ってるのがヲタクなんだからちょっとはロマンチックにも脳味噌使いなさいよ!」
俺の襟足を掴んで揺さぶりながらある意味罵声を浴びせてくる。
「脳震盪なるわ」
危うく目の前が白くなりそうなところで止めてもらう。常日頃から冷めた目で世間を見てる心だからロマンチックな感情が芽生えてこないのだろうか。会社でも何処でも人付き合いは得意ではなく、出来れば極力人との関わりは少ない方が好ましいとさえ思っている。
人に気を使うのも使われるのもストレスの元なのだ。だからアニメを観ている時はその作品の事だけを独りで考えていれば良いのだから、引きこもりではないが他との接触を遮ってしまいがちになる。アニメを観ることがヲタクと呼ばれる要因ではあるがそのことによって思想も独りよがりになり冷めた考えが多く生まれるということか。