雪降る夜は君に会いたい
「お兄ちゃんの次の課題はロマンチックを取り戻すことね」
「元々無かったら取り戻すもなにもないよな」
「その斜め下からの余計な感情を抹殺してあげたいわ。子供の頃サンタさん信じてなかったの?」
「子供? サンタさんは今でも信じているぞ。いるに決まっているじゃないか! 大人になったから居ないと決めつけて子供達には夢を壊すなだなんて間違っている!」
「なに? ちゃんとロマンチックな感情あるんじゃないの」

 雪実は元の笑顔に戻ってくれた。やっぱり可愛い女の子は笑顔が一番似合っている。

「この時期、販促品で推しキャラがサンタコスしてるのを見るとやっぱりサンタは居る、居なきゃ困るって思うんだよなぁミニスカワンピースサンタ萌」
「最低だわ……」

 幻滅した顔になった為か雪実のツインテールも心なしか、しなった様に見える。どうも雪実の事を可愛いと思ったら照れ隠しに嫌がる事を言ってしまいがちになる。まぁ今のサンタコス推しキャラは本音なのだが、雪実のリアクションは想定内だった。
 少し歩いているとアクセサリーショップのガラスに雪実は張り付いた。

「見て見てこれ! 可愛いぃ」

 三日月の可愛らしいネックレスを雪実は指さしていた。
 普通に可愛いと思ったのか、月に縁を無意識のうちに感じてしまうのだろうか先程の様に漫画なら目がお星さまになってるくらい輝いていた。
 可愛く好みの顔立ちと言ってもそれは俺だけの感覚であって、普通の人間の女の子じゃないからオシャレしようにもできる環境ではない。本来のあやかしならオシャレに興味など沸いてこないのかもしれないが。

「欲しいのか?」
「うぅぅ……」

 憐れみなのか。いや、あやかしにそんな感情を俺が持つ筈がない。じゃあどういった感情で俺はこんなことを聞いたのだろうか。
 俯いてから上目遣いで俺の方を見てくる。その眼が無言で答えを出しているのがわかる。

「今日は色々頑張ってくれたからお礼に買ってやるよ」
「ホントにぃ!?」

 今日一番の笑顔を見た。
 あぁ俺はこの笑顔が見たくて聞いたんだ。わかっていたのにわからないフリをして、ワザと自分から雪実との距離を保っていたのだ。
 気付かないフリをしてればやり過ごせていたのに、聞けばどんな反応するのかわかっていたのに、そしてその後の自分の行動もわかっていたのに……。
 気付かないフリをして聞いて、そんなつもりじゃなかったって自分に嘘を付いて……。



< 11 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop