雪降る夜は君に会いたい
「そんな理由でせっかくの誘いを延ばす? これだらヲタクって……」
「そんなって、劇場版を初日に観に行く事がどれだけ重要でヲタ道の基本か……」

 ヲタクでない雪実に説明しても納得はしないのだろうがこれだけは言わして欲しかった。ただ、折角詩織さんが誘ってくれたのに劇場版公開初日を優先したことは絶対バレないようにしろと念を押された。

「わかってる、わかってるんだけど中止じゃなくて延期だから良しとしよう!」

 能天気に調子乗ってる俺を見て流石の雪実も呆れ顔だった。



「カンパーイ!」

 念願の天野さんとのデート当日! 雪実的にはデートではなくお礼をする日みたいだが、気分的に俺はデートのつもりで舞い上がっている。
 それもその筈、食事だけで解散になったら雪実の言うとおり只のお礼なのかもしれないが、その後アミューズメントで二人仲良くメダルや対戦ゲームで楽しく遊んでしまった。いわゆる二次会ってやつだ。
 勿論格闘ゲームのガチのやつじゃなくエアーホッケー等の類いである。
 お互い、案外いい勝負をして汗をかくほど真剣に遊べた。
 最初の食事が終わって解散の雰囲気ならそれに委ねるつもりだったが、天野さんの『この後どうする?』の言葉に俺は準備していたゲーセンへの誘い言葉を切り出した。
 高校生みたいなデートって思われるかもしれないが、これには二つの理由があり一つは俺にとってはデートどころか恋愛を経験している高校生にも劣っていること。そこは素直に認めなくてはならない事実である。
 だからこそ、健全で楽しいデートっぽいのを経験したくて誘ってみた。
 もう一つの理由は妥当性でカラオケに流れるのを阻止したかった為だ。
 歌も上手くないが、歌える曲がアニソン限定になってしまう。しかもマジ熱唱などドン引き処かトイレと偽って帰宅する恐れがあるからだ。だから天野さんがカラオケでもって言い出す前に切り出し誘ってみたのだが、正解であったと幸せ度数はマックスである。
 これで解散かと思いきや、二人で飲みに行こうという次は大人っぽいデートになっての乾杯である。
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