雪降る夜は君に会いたい
「美味しいね、これ」
「食べてばかりじゃなくて今後の計画を教えてくれよ」
「なにその上から目線での頼み方」
「誰のお金で食べてると思っているんだ?」

 三種類のハンバーガーとサイドメニューもたらふく注文して、テーブルをいっぱいにして食べることに必死になってる雪実にこれ以上下から目線で頼めと言うのか。
 だいたいアイスのような溶けるデザートは一段落してから注文すればいいのに、一緒に頼んだものだから溶けそうな所を一口食べてはバーガーを食べる。やはり雪女は十一月であっても季節関係なく体内に冷たい物を取り入れなければならないのだろうか。
 サイドメニューだけになったところで一息ついたのか、またメニューを見だした。おいおい。

「こないだのハロウィンのお礼がしたいって言ってたじゃん?」
「おぉ、けど社交辞令じゃないの?」
「お兄ちゃんの好きになった人ってそんな人なの?」
「そう言われると、期待してしまうかも」
「無難に食事でも誘ってくれるとしたら、その場で告白するのよ」
「ブフォッ!」

 飲みかけのコーヒーを吹いてしまう。

「ゴホッ、じょ、冗談だろ?」
「冗談はお兄ちゃんの顔とセンスと趣味よ」

 なんか俺の存在全否定されたように聞こえるのだが、それにしても告白って中学生じゃあるまいし食事って初デートみたいなイベントでいきなりなんて急ぎすぎやしないのかと思ってしまう。
 ナプキンで外した眼鏡と顔のコーヒーを拭きとった。

「それよ!」
「今度はどれだよ」
「眼鏡よ! 漫画じゃよくあるネタだと思っていたけど眼鏡がお兄ちゃんと一体化してたから違和感なかったというか、お兄ちゃん自体が違和感というかしっくりこなかったの、それよ!」

 もの凄く嬉しそうに言ってくれるが、微妙に俺のことをバカにしてないのかと不安になる。
 しなったポテトを早く食べろと言わんばかりに俺に差し出してくる。だいたい注文し過ぎだしもっと温かいうちに食べとけよって話だ。

「今度はこっちのブルーベリー味も食べてみたいわね」

 人にポテトを推し付けておいて自分はアイスのメニューを真剣に見ている。本当にアイスを体内が欲しているのだろうか。

    ※
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