年上少女のことが好きな年下少年の恋物語
「ふわぁあっ・・・・・・」


「眠そうだね、ゆずの」



時刻は8時。いつもなら眠くないのだが、朝早起きしたせいか、それともバスの揺れが心地よいのか、眠気が増す。




走ったから寝て体力戻そう・・・・・・



視界がパタリと真っ黒に染まった。







「・・・・・・の」



「・・・・・・ずの」



「ゆずの!!着いたよ!!」



目を覚ますと、もうバスは止まっていた。


バスから降りると、数台の同じ型のバスがあり、それぞれのクラスで降りての説明をしている。



周りは本当に山で囲まれていて空気が澄んでいて美味しい。



「今日から1泊2日のオリエンテーションが始まる。みんな自前の枕は持ってきたかー??俺はちゃんと持ってきたぞ」



そんなたわいのない話を終えると、クラスごとに山を登り始めた。




山を登ると、宿があり、そこで一泊してまた山を下る。



そこで料理したり、川遊びしたりするのだ。




舗装されている道を通り、宿を目指す。



「ぎゃあっ!!」


前に歩く千代ちゃんが足を滑らせる。



「うぐおっ・・・!!」



その前にいた桜賀に捕まり、桜賀が下敷きとなり転ぶ。



「お・・・も・・・」



「はっ??なんか言った??」



「・・・なんでもないです」



千代ちゃんが手を伸ばし、桜賀くんを引き上げる。



桜賀くんはこの間買ったピンクの靴を履き、黄色のリュックを背負いながらまた進む。




「千代ちゃん平気ー??」



「うん。いいクッションがあったから」



と、ぐっとポーズを見せる。



「ゆずも気をつけてね〜ここら辺滑るっぽいから」



「私は平気だよ〜さっきからコケてるから〜」



ゆずのジャージはもう泥だらけであった。



ジャージの替え持ってきてるから全然平気!まだ転べる!



「あうっ・・・!?」



次は前に転ぶわけでなく、後ろに滑ってしまった。


まるで、ギャグ漫画のアレのように・・・・・・



重心が後ろに行く。



目をギュッと瞑り、痛みを覚悟する。





ガサッ────────




痛く・・・・・・ない。



ゆっくりと目を開けると、青い空が見えた。



「ゆず、大事・・・??」



その声は、傑くんで、すごく近くで聞こえた。


倒れそうになった私の体を、傑くんが支えてくれたのだ。




「わあっ!?ごめっ・・・」


慌てて体勢を立て直す。



傑くんは静かに笑うと、そのまま先へ行ってしまった。







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