年上少女のことが好きな年下少年の恋物語
愛咲響は、五人兄妹の長女だった。


父親は昔、母親に暴力を振っており、そのまま別れてしまった。


母親は、1人で5人の子供を育てる気力が尽き、朝昼晩、ほぼ家に帰ってくることは無かった。



「これじゃ足りないよ・・・・・・」



机の上に毎月1回お金が置いてある。


そのお金の額は多い時もあれば、少ない時もある。



今回はその少ない時だ。



「姉ちゃん、遊ぼー!!」


「響姉ちゃん、見てこれ、幼稚園で描いたの!!」


「響姉、奏が泣いてるよぉ!!」


「うわーーあん・・・痛いよぉーっ!!」


4歳下の弟、桜(さくら)。5歳下の弟、雫(しずく)。6歳下の妹、心(こころ)。8歳下の弟、奏(かなで)。



奏は頭をぶつけて尻もちをついている。

頭の赤くなったところを保冷剤で冷やしてあげる。





その後に雫の幼稚園で描いたという絵を見る。




それを見ると、目元が熱くなった。


目に涙が溜まってくる。



「響姉ちゃん??なんで泣いてるの??」



「・・・はは・・・ごめん。絵、上手だね。雫は」


雫のふわふわな髪の毛を、両手でぐしゃぐしゃにする。


「響姉ちゃんっ・・・ははっ!!やめてよ〜!!」


「わっ!!ずるい!!心にもやって!!」


「僕にも!!」



響の周りに兄妹たちが集まる。


温かい。この子達は私の宝物だ・・・・・・



その絵には、6人描かれていた。

まだ幼い子が描いたから、人の区別はつかないが、ガタガタな字で、名前が書いてあった。


『こころ。かなで。さくら。ぼく。ひびきねえちゃん。おかあさん』


雫は家族が大好きなんだ。



顔もろくに合わせないような母親が、大好きなんだ。




今月も頑張ろう、そう思った。




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