年上少女のことが好きな年下少年の恋物語
本当に悪いと思った。本当に、本当に。
「────────ありがとう。面白かった」
字も見えず、読むことなんてできなかった。
瑠子は、本当に驚いて、それでまた悲しそうに静かに引きつった笑顔を見せる。
ごめんなさい。ごめんなさい・・・・・・
理由を話せば済む話だ。
けど、そんなこと、言い訳にもならない。
兄妹への教えが悪い、親が悪いってきっと思われる。
それは避けたい。私の学校生活で、ワケあり家族のレッテルを貼られたくない。普通でいたい。
痛い。心が痛い。クラスのみんなが見てる。それに鈴くんも。
私がずっと好きだった鈴くんが、こんな最低な私を見てる。
折角友達になりたいと思っていた瑠子も、また私と距離を置く。
────────それは嫌だった
「また、貸してね・・・」
それだけ言って、瑠子の机を離れた。
あぁ、なんて運が悪いんだろう・・・
「響、あんた、こんな真面目な本読んでんの?」
買い物から帰ると家にはお母さんがいた。
ランドセルの中を見たのか、今日借りたばっかりの本を2冊手に持っていた。
「ふーん、こんなの読んでも仕方ないけどね」
すると、キッチンのガスコンロへ行き、本を燃やし始めた。
「ね!?ねぇ!!やめてよ!!」
本を持つ母親の手にしがみつき、本が落ちる。
そして慌てて水をかける。
「な、何すんのよ!!」
母親は冷たい目で私を見る。
昔の、優しいお母さんじゃない。
香水の匂いと酒の匂いが混じりあって、最悪だ。
化粧も濃くて、すっぴんでも美人な顔が台無しだ。
髪の色も染め、クルクルに巻き、本当に誰なんだろう。この人は、
「・・・・・・子供たちをよろしくね。響」
そう言い残して家を出ていった。
少し焼け焦げ、水浸しの本を見て、涙が止まらなかった。
ごめんなさい・・・瑠子・・・ごめん・・・っ・・・
兄妹たちが遊びに行っててくれて助かった。こんな状況見せたくない。
泣いてなんかいられない。私は、お姉ちゃんだから、長女だから・・・・・・