年上少女のことが好きな年下少年の恋物語
次の日、またその本を返す。



今回は最悪だ。焼けてるし。水でしわくちゃだし。



「ありがとう・・・・・・」




ごめんなさいって心では思ってるのに、言葉に出てこない。


これじゃ、もっと最低なやつじゃん、私・・・・・・



もう慣れたかのように表情を変えない瑠子は、2冊の本を受け取ると、すぐに机の中へと入れた。




見たくないのは当たり前・・・だよね・・・。







翌日。



朝、正作くんに呼び出された。


そして、もうこういうことやめたらって言われた。




私も、わざとやってるわけじゃないって、泣いちゃった。



正作くんは私が傷つかないようにって、鈴くんの代わりにやめろって言ってくれた。




ありがとう。正作くんは優しい、けど、いいの。



私は傷つかなくちゃダメなの。優しくしちゃダメなの。




正作くんは何も言わず、泣き終わるまで居てくれた。





ちょっと頭を冷して教室へ戻ると、そこには瑠子と正作くんがいた。




瑠子の机には本が山ずみになっていた。私が貸してもらってダメにした本の数くらいある。




「───────鈴がお小遣い全部使って、昨日買ってきたんだ」




その正作くんの言葉を聞いた。



さっき止まったはずの涙がまた頬を伝ってくる。





私が、普通の家の子だったら。


私が、もう少し素直だったら。


私が、私が、私が────────








それから時間も年も経ち、私は作陽中1年になった。




制服は、お母さんが揃えてくれた。


「それくらいしか、私にできることはないから・・・」と、お母さんは、微笑んだ。



前より少し痩せて、化粧っ気も控えめだ。




そして、お金も少しずつ置いていく量が増えていた。





全てがいい方向へ進んでいる気がした。







クラスのメンバー表を見た時、少しヒヤッとした。




愛咲響・・・・・・一百野正作・・・・・・佐々木瑠子・・・・・・御門鈴・・・・・・




4年生の時以来、このメンバーの誰ともなったことがない。




だからチャンスだと思った。


謝るチャンス。仲良くなれるチャンス。鈴くんと距離を縮められるチャンス。




だから、頑張らなきゃ・・・・・・。











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