年上少女のことが好きな年下少年の恋物語



その話を聞いて、俺はなんて馬鹿なんだろうって思った。



愛咲を誤解していた。ただ、嫌がらせをしている酷いやつだって。



愛咲のこと、何も知らず、そんな俺がどうしようもなく嫌になった。




たくさん傷ついて、たくさん泣いた愛咲は、とても強い人間だった。






「私、鈴くんと佐々木さん・・・瑠子に、謝りたくて」




この子は、鈴と同じ不器用な子で、優しいところも同じだ。





「普通に謝ればいいんだよ。普通に、いつも通りに」



「普通・・・??普通ってなんだろう・・・オラァ・・・いや、うふふ・・・??」



そんな見当違いな独り言をしている響を見て、正作は不意に笑顔になる。



「ははっ・・・わかんないなぁ・・・でも頑張る!!ありがとう」


「・・・・・・うん」



その笑顔を見て、脈が速くなる。



なんだろう・・・・・・胸がザワザワする。








「鈴くん、瑠子・・・・・・」



昼食時間が終わり、また頂上へ向けて歩き出した時、実行委員の2人がいる場所へ、響は行った。




「・・・??なんだ、愛咲」


「・・・・・・??」



2人とも、普通に接してくれている。



「・・・・・・あの、今まで・・・ごめん!!」


「・・・・・・へ??」


「え!?あ、頭上げて、愛咲さんっ」



鈴は、なんかやられたっけ、みたいな顔をして、瑠子は、慌てている。気のせいか、前より明るくなった気がする。




「私、今までひどいことしたよね。ホントごめん。許して欲しいとは言わない・・・けど、謝らせて」



瑠子は、なぜだか優しく笑う。



「いいよ。私、嘘かと思うかもしれないけど、あんまり気にしてなかった。だから、私は愛咲さんのこと、恨んだりとかしてないよ」



「・・・・・・じゃぁ、仲良くしてくれる・・・??友達になって・・・くれる・・・??」




「うん。もちろん」




「あ、俺もダチだぜ!!」



そんな2人の優しさに、今まで緊張していた脳が緩み、ついでに涙腺も緩む。




「・・・ふあぁああ・・・っ・・・ありがとうぅう」



「え!?愛咲さん!?」




そしていつの間にか鈴の横にいた正作が、




「あ、鈴泣かせた」




「ぇぇええ!?俺!?俺と友達やなの!?」




私は幸せだなぁ。



こんな優しい友達がいて、笑わせてくれる友達がいて、




前まで私だけ、なんでこんな苦しまなくちゃいけないのって思ってたけど、




今はそんなこと思わない。




私は私。自分で幸せを掴もう。





4人で見た頂上からの景色は、とても美しくて、




私の背中を押してくれていた気がした。





< 39 / 46 >

この作品をシェア

pagetop