年上少女のことが好きな年下少年の恋物語
その話を聞いて、俺はなんて馬鹿なんだろうって思った。
愛咲を誤解していた。ただ、嫌がらせをしている酷いやつだって。
愛咲のこと、何も知らず、そんな俺がどうしようもなく嫌になった。
たくさん傷ついて、たくさん泣いた愛咲は、とても強い人間だった。
「私、鈴くんと佐々木さん・・・瑠子に、謝りたくて」
この子は、鈴と同じ不器用な子で、優しいところも同じだ。
「普通に謝ればいいんだよ。普通に、いつも通りに」
「普通・・・??普通ってなんだろう・・・オラァ・・・いや、うふふ・・・??」
そんな見当違いな独り言をしている響を見て、正作は不意に笑顔になる。
「ははっ・・・わかんないなぁ・・・でも頑張る!!ありがとう」
「・・・・・・うん」
その笑顔を見て、脈が速くなる。
なんだろう・・・・・・胸がザワザワする。
「鈴くん、瑠子・・・・・・」
昼食時間が終わり、また頂上へ向けて歩き出した時、実行委員の2人がいる場所へ、響は行った。
「・・・??なんだ、愛咲」
「・・・・・・??」
2人とも、普通に接してくれている。
「・・・・・・あの、今まで・・・ごめん!!」
「・・・・・・へ??」
「え!?あ、頭上げて、愛咲さんっ」
鈴は、なんかやられたっけ、みたいな顔をして、瑠子は、慌てている。気のせいか、前より明るくなった気がする。
「私、今までひどいことしたよね。ホントごめん。許して欲しいとは言わない・・・けど、謝らせて」
瑠子は、なぜだか優しく笑う。
「いいよ。私、嘘かと思うかもしれないけど、あんまり気にしてなかった。だから、私は愛咲さんのこと、恨んだりとかしてないよ」
「・・・・・・じゃぁ、仲良くしてくれる・・・??友達になって・・・くれる・・・??」
「うん。もちろん」
「あ、俺もダチだぜ!!」
そんな2人の優しさに、今まで緊張していた脳が緩み、ついでに涙腺も緩む。
「・・・ふあぁああ・・・っ・・・ありがとうぅう」
「え!?愛咲さん!?」
そしていつの間にか鈴の横にいた正作が、
「あ、鈴泣かせた」
「ぇぇええ!?俺!?俺と友達やなの!?」
私は幸せだなぁ。
こんな優しい友達がいて、笑わせてくれる友達がいて、
前まで私だけ、なんでこんな苦しまなくちゃいけないのって思ってたけど、
今はそんなこと思わない。
私は私。自分で幸せを掴もう。
4人で見た頂上からの景色は、とても美しくて、
私の背中を押してくれていた気がした。