一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「戻りました」

午後2時。

やつれた顔の海音が佐和山建設本社に帰社した。

「おかえりなさい」

「ただいま。・・・森田夫妻の件は悪かったな、萌音と杉田任せにして」

「いえ、問題なく進んでいますから」

帰社してから海音は萌音の顔を見ようとしない。

萌音の隣の席に座った海音から、佐和田の香水の香りがした。

萌音がさりげなく海音の方を見ると、海音の首筋にはキスマークが、ワイシャツには口紅のあとが見えた。

萌音はゆっくりと顔を正面のパソコンに戻す。

言い知れぬ感情が萌音の心を渦巻いていく。

「すみません、海音さん。部長に話があるので離席します」

萌音はそう宣言すると、机をパンっと叩いて席を立った。

「あ、ああ。行ってくるといい」

いまだに海音は心ここにあらず、のようだ。

萌音はバッグと書類を持って立ちあがり、設計課をあとにした。
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