一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
声をかけてきた人物、そう、萌音を゛妹さん゛と呼ぶ人物は一人しかいない。

佐和田だ・・・下の名前は知らない。

「海音さんは戻ってきているかしら?」

「ええ、戻られていますよ」

「あら、仕事の相棒なのに彼のスケジュールを把握していないのね」

「ええ、ご心配なさらずに。もう私のバディではありませんから」

怪訝な顔をしていた佐和田だったが、萌音の言葉を聞いて、パァッと表情を明るくした。

佐和田はきちんとしているイメージだったが、今、萌音の目の前にいる佐和田は髪が乱れ、スーツも心なしかシワになっている。

萌音がそんな佐和田をじっと見ていると

「あら、はしたない格好って思ったわよね。さっきまで彼と一緒だったんだけど、情熱的な彼のおいたが過ぎたのね・・・。仕事があるって帰っていったんだけど、忘れ物があったから届けに来たの」

萌音の頭に、海音の首のキスマークとワイシャツの口紅、身体に染み付いた佐和田の香水の匂いが思い起こされた。

目の前の沢田からも同じ匂いがする。

ワイシャツにつけられた口紅と同じ色の口紅をつけた佐和田の存在は、間違いなく二人がそのような行為に及んだことを実証していた。

「海音さんなら設計課にいらっしゃいます。私は仕事がありますので失礼します」

「そう、お疲れ様。今後は私の許可なく海音さんに近づかないでね」

勝ち誇る佐和田に軽くお辞儀をすると、萌音は背筋を伸ばしてその場を去った。

折れない姿勢、それが萌音の精一杯の強がりだった・・・。
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