一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「萌音ちゃん、こっちこっち」

中武主任が戻ってきた萌音を見つけて手招きをする。

入り口近くの席は、インテリアデザイン部門の桜としのぶの席とも近く、設計課の他の男性社員も、萌音の急なデスク変更を訝しんでいる様子はなかった。

「バディは別件で忙しくなった海音に代わり、期間限定で俺が担当することになったと言ってあるから」

萌音の耳元で囁く中武に頷いて見せると、離れたデスクから恨みのこもったような海音の視線を感じた。

誰かに何かを言われたのか、海音は作業着に着替えている。

゛睨みたいのはこっちだよ゛

萌音はプイッと背を向けると、新しい自席についた。

「萌音ちゃんと近くの席になれて嬉しいわ」

「流川さん、これからしばらくの間よろしくね」

桜としのぶの柔らかな声に癒される。

「こちらこそよろしくお願いします」

ようやく笑顔を見せた萌音の頭をグリグリと中武主任が撫でる。

「それでこそ萌音ちゃんだ。頑張ろうな」

「はい」

優しい先輩や同僚に囲まれて、萌音は幸せだと思った。

しばらくは海音のことは考えずに仕事をしよう。

同じ課内だから、視界に入るのは致しかたない。

萌音は、デザイン帳を出して森田夫妻のテーブルとチェストのデッサンに集中した。
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