一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「な、何言ってるのよ。私は美しいものが揃っているところを見て想像するのが好きなだけよ」

「ははん、萌音ちゃん、みんなが海音のことを好きなんじゃないかって、疑心暗鬼になってるのね。安心して。しのぶちゃんには中学のときから付き合ってる彼氏がいるのよ」

「えっ?中学のときから?」

「食いつくのそこ?」

ワタワタと海音への好意を否定するしのぶを尻目に、桜は笑っている。

゛中学の頃からの付き合いなら5年以上も同じ人と付き合っているの?しのぶちゃん、名前負けしてない!゛

恋する気持ちに疑いを抱きはじめていた萌音は、素直に感動していた。

一方で

゛そういう桜さんこそ、海音と呼び捨てするくらいだし深い関係なのかも・・・゛

という、拭い切れなかったもう一つの疑問も浮上する。

「そして私のことも疑ってる。そうでしょ?」

ぼんやりと考えていた萌音の心を見透かすように、桜が呟いた。

「・・・っ!」

゛超能力者に違いない゛

萌音は出来もしないのに、一切の思考を止めようとして・・・結構すぐに挫折した。

「安心して。私は海音の実の姉なの。道端産業の社長の息子に嫁いでいるから名字が違うの」

道端産業もこの界隈の飲食業界では一、二を争う大手企業だ。

「佐和山建設はすでに道端産業と提携しているってわかったでしょ?父が道端を裏切るようなことをするわけないわ。今回は、海音の力を試しているのよ。・・・まあ、海音は早速、あのゲスな女性の仕掛ける罠にまんまと嵌められそうになってるようだけど」

佐和山建設と佐和田産業の提携はない・・・。

一抹の希望が、萌音の心に安心をもたらした。

「ねえ、萌音ちゃん。あなた、海音の気持ちはもう聞いているのよね?」

桜の言葉の意味がわからないしのぶは一人首をかしげているが、萌音は桜の目を見てゆっくりと頷いた。

「こんなこと、身内の私が言うことではないのだろうけど変な女の横やりでこじれる前に言わせてもらうわ」

海音のためにここまで言ってのける桜は、海音にとってとてもいい姉なのだろうと萌音は思った。

「海音の初恋は萌音ちゃん、あなた。建設以外のことには目もくれず、勉強だけに打ち込んできたわ。それもこれもあなたや長嶺教授に認められるため。そんな海音が今さらあんなケバ女・・・失礼、なんかに惹かれると思う?いや、思わない。思うばずがないわ!父も私もそれは保証する」

゛風太郎といい、桜といい、海音といい、佐和山家の面々は個性的ですごいな・・・゛

と、萌音は頷きながら思った。

「ええ?海音さん、やっぱり流川さんのことが好きだったんだ?しかも初恋なんて・・・儚すぎて美しすぎて萌えちゃう」

場を和ますしのぶのパラレルワールドが炸裂する。

どうやら一人で考え込むより、素直に信頼する誰がの話を聞く方が手っ取り早いのかもしれない・・・。
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