一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「萌音・・・」

「海音さん」

見つめ合う二人だったが、萌音はすぐに海音の異変に気づいた。

立ち上がろうとした海音の表情は固く強張り、辛い痛みに堪えているように見える。

゛そうだ、海音さん、足を捻挫してたんだった゛

萌音は佐和田への嫉妬から、すっかり失念していた・・・

というか、振り回されて悔しかったからわざと気づかぬふりをしていたのだ。

゛手負いのイケメンフェチ゛

がムクムクと顔を出そうとする。

だが、今の萌音は怒っている、怒っていいはずだ。

だから無視して通りすぎようとしたのだが、

『むしろ信じなくてどうするの?彼になら裏切られていたとしても、それが本当だと実証されなければ信じられるくらいには彼が好きだよ』

と、いうしのぶの言葉が思い起こされ立ち止まった。

作業着のままの海音。

一体どれくらいの時間ここで待っていたのだろうか?

「ずっと待っていたんですか?」

「いや、桜から今から解散するって連絡もらってから会社を出て来た」

そうだった。海音と桜は姉弟だったのだと、萌音は今さらながらに思い出した。

「足、痛そうですけど」

「まあな。でも萌音に疑われて傷ついた心に比べればなんてことないよ」

「疑い・・・なんですか?」

「当たり前だろ。あんな女、頼まれても触りたくもない」

゛口紅にキスマーク、残り香まで移させてよく言うわ゛

心のうちでホッとしながらも、萌音は納得しきれずにいる。

しかし、絶妙なタイミングで

ギュルルルル・・・。

と、海音のお腹の虫が鳴き出した。

゛手負いのイケメン恐るべし゛

腹の虫まで自由自在に懐柔できるとは恐れ入る。

萌音は自分の゛手負いイケメンフェチ゛を押さえ込むことができず。

「しょうがないな。海士音さん、ほら、つかまって」

クスッと笑うと、海音の腕を支えてマンションの中に海音を連れて帰ることにした。

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