一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
海音の話とビデオの画像を解析すると、事件の概要はこうらしい・・・。

゛社内秘となっている仕事の打ち合わせがしたいから人目のつくところは避けたい。社長とその秘書も後で来るから゛

と佐和田に諭され、半信半疑ながらもついて行き、スイートルームに案内された。

大企業の社長レベルではホテルのスイートで会合というのもあるにはあるらしい。

応接室らしきリビング調の部屋に案内され、ソファに座るよう促すと、しばらくして佐和田がコーヒーを持ってやってきた。

ほんのりブランデーのような香りがするそれは、いかにも胡散臭い。

しかも、一向に社長も秘書も来る様子がない。

なぜ来ないのかと海音が尋ねたら、佐和田は電話で連絡をしてくると言って一旦離席した。

海音はこの時点で、コーヒーへの異物混入を疑い、海音に差し出されたコーヒーと佐和田のコーヒーを入れ換えた。

飲み干したふりをするため、海音はコーヒーを観葉植物にかけ、その上から持ってきていたミネラルウォーターをかけて匂いを消した。

数分後、笑顔で戻ってきた佐和田は、準備した書類を海音に見せながら、ためらいなく目の前のコーヒーに口をつけた。

チラリと海音のコーヒーカップを見て満足げな顔をしている。

゛やはり何かあるな゛と確信した海音は、商談を進めようとする佐和田に

『おい、俺は引き受けるとは言っていない。それに社長と秘書はまだ来ていないだろう?』

と言って立ち上がろうとしていた。

余裕綽々で立ち上がった佐和田は、海音の隣に座り、ネットリと身を寄せてきた。

『もうすぐ来るわ。仕事の話が嫌なら、それまで私と他の話でもしましょうよ』

萌音は思わず、スマホの画面から目を背けそうになったが、

「これからが山場だ。ちゃんと見てて」

と言った海音に諭され、画面に視線を戻した。

『やめろ、俺には萌音がいるって何度言ったらわかるんだ』

海音の叫ぶ声に萌音の胸がキュンとなる。

『あんなお子さまに義理立てすることはないわ。大人の女の魅力に気づいたからお前は用なしだって一言言えばいいのよ』

180cmの海音は細マッチョ。

だが、175cmはあるだろう佐和田の腕力はそれ以上だった。

『無駄よ。私はこう見えて柔道5段なの』

そういって海音を押し倒したかと思うと、上下を逆転させ、まるで海音が押し倒したかのような状態に持ち込んだ。

『絞め技も得意よ』

そういった佐和田はニヤリと笑い、相手を失神させる技の一種である三角絞(さんかくじめ)を仕掛けている。

海音は、両腕を取られたかと思うと、直後に佐和田の両足を首にかけられる。

両下腿に頸動脈が圧迫され、気が遠くなる。

『そろそろ本当に眠くなる頃でしょ?素直に私と付き合いたいって言わないからこんな強行手段にでなければいかなくなったじゃない・・・』

そんな言葉を最後に、海音の身体が佐和田の胸元に崩れ落ちる。



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