一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「気を失ったの?」

「ああ、頸動脈を左右両方一度に圧迫されたら迷走神経反射と酸欠で気を失うんだ。だが幸いなことに、俺は昔この技をかけられたことがあって、両肩で咄嗟に圧迫を逃がした。もちろん唇の貞操も守ったからな」

スマホの画像を一旦停止して、萌音は海音を見ながら首に手を伸ばす

「この首のキスマーク・・・」

「これはキスマークじゃない。あいつの膝が当たった時に傷がついたんだと思う」

口紅も、海音が倒れこんだ拍子にシャツについたらしい。

画像を巻き戻してみると、海音の言っていることは概ね正しいようだった。

「お酒に睡眠導入剤・・・。女性をお持ち帰りしたいときに使う奴がいるって聞いてたが、まさか男の俺が使われそうになるとはな」

失神しかけた海音が激しく抵抗しようとした途端、佐和田の動きが静かになった。

自分で仕掛けた薬とアルコールが効いてきたのだろう。

横たわる佐和田の呼吸は穏やか、脈は少し早いが寝ているようにしか見えない。

心外だったが、海音は佐和田をソファに横たえブランケットをかけると、内線電話でホテルのフロント職員を呼び出した。

『打ち合わせのためにこちらに来ましたが、担当者が寝てしまって話になりません。申し訳ありませんが、彼女の会社の人が来るまでついていてはくれませんか?』

慌ててやってきた女性社員は、立ち去ろうとしている海音を見て訝しがっているようにも見えた。

『しかし・・・』

海音が何かしたのではと疑っていたのだろう。

海音はホテルの職員に名刺を渡すと、

『心配ありません。私は彼女に危害は加えておりません。なんならホテルの顧問弁護士に経過を伝えても?』

『私の一存では判断できません。オーナーと顧問弁護士を呼んでもよろしいですか?』

『構いません。好都合です』

女性社員の連絡を受けてスイートルームにやって来たのは、20代後半とおぼしき、落ち着いた雰囲気のホテルCEOと女性弁護士だった。

美男美女の二人は、このホテルの名物にもなっている。

『何かトラブルでもございましたか?』

海音は二人にスマホで撮影した一部始終を見せ、自分の方が被害者であることを証明して見せた。
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