一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「最悪のシナリオを予測して、俺はICレコーダーとスマホのビデオ機能を使って一部始終を記録した。普通の商談で終わるなら、記録を削除して終わりのはずだったんだ」

ビデオデータを見ながらあんぐりと口を開ける風太郎は冬眠明けの寝ぼけた熊のようで笑える。

思わず吹き出しそうになると、風太郎は毅然とした態度で

「だが、コーヒーに何かをいれたかどうかまでは証明できないだろう?ビデオが回っていないときにお前が何かをいれたと言われるかもしれん」

と正論を言った。

「そう。だからこそHotel bloomingを商談場所に指定した。まさかスイートルームを予約されるとは思っても見なかったけどな」

海音は方をすくめてまた笑った。

「そんなに余裕でいていいのか?」

「Hotel bloomingには顧問弁護士がいるんだ。その女性の婚約者がそこのCEO。佐和田から逃げるとき俺は彼らに相談した。佐和田が使ったコーヒーカップも同時に回収してもらって、夢谷弁護士の知人の警察官に協力してもらい鑑識に回してもらえることになった」

夢谷弁護士を溺愛する桜坂CEOも、男女関係のトラブルに自分のホテルが使われたとなっては黙ってはおけないと協力を約束してくれた。

佐和田は決して海音のことを好きな訳ではない
と海音は思っている。

仮にも好きな男に対して、三角絞めなんてみっともない格好の寝技をかけて気絶させるだろうか?

いや、ない・・・。マジでない。

1mmも思い返したくはない。

だとすれば、佐和田の狙いはなんなのか?

それがわからないうちは、彼女を泳がせて、更なる証拠集めに奔走した方が得だと考えた。

案の定、佐和田は写真で海音を脅そうとしている。

「佐和田の狙いがわからないうちは、こちらも手の内を明かさない方がいい。ただ、萌音に危害を与えようとするなら話は別だ。叩きのめす」

「ああ、それならもう手遅れかもな。私の秘書があのお嬢さまと萌音ちゃんが会社近くの歩道で話しているのを見かけたと言っていたぞ。゛海音に近づくな゛って脅していたらしい」

悪巧みを暴いたら、社会的に抹殺しなければ気がすまない。

海音は深呼吸を繰り返しながら、握った拳を震わせていた。
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