一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「野瀬ちゃん、ちょっといいかな?」
海音と萌音を見送った野瀬教授が、二人をもてなした茶菓子類を片付けていると、大学時代からの悪友、長嶺が研究室に顔を出した。
「あら、長嶺教授じゃない。あなたの愛娘と将来の息子は仲良く手を繋いで帰ったわよ」
「君と話して萌音の不安は解消できたかな?」
「そうねえ。今時珍しいほど純粋な二人よね。私の講義に感化されて人生を決めてしまうほどひたむきで」
野瀬教授は、長嶺にコーヒーを入れると、自らも再度、ソファに座る。
「ここに来るまでの萌音ちゃんは、羽化し始めた蝶のように不安定だった。少しでも外敵に狙われたら倒れてしまう脆さがあったの。でもそうした過程を経て、自分と周りの世界を信じる勇気が持てたと思うわ」
理系で何事も白黒つかないと納得がいかない長嶺は現実主義者だったが、萌音の母、流川結子と別れるときには心の底から悩み、悲しみに打ちひしがれていた。
そんなときに、結子ならず長嶺の相談までものってくれたのは、他ならぬこの野瀬だった。
野瀬は看護師であり、助産師であり、カウンセラーでもある。
やや、スピリチュアルなことに重きを置く点が、若かった長嶺には理解できなかったが、離婚という人生の転帰に際し、大人の都合で謀らずとも子供である萌音を傷つけたやましさは消せず、その柔軟な考えに癒されることも多かったのだ。
海音と萌音を見送った野瀬教授が、二人をもてなした茶菓子類を片付けていると、大学時代からの悪友、長嶺が研究室に顔を出した。
「あら、長嶺教授じゃない。あなたの愛娘と将来の息子は仲良く手を繋いで帰ったわよ」
「君と話して萌音の不安は解消できたかな?」
「そうねえ。今時珍しいほど純粋な二人よね。私の講義に感化されて人生を決めてしまうほどひたむきで」
野瀬教授は、長嶺にコーヒーを入れると、自らも再度、ソファに座る。
「ここに来るまでの萌音ちゃんは、羽化し始めた蝶のように不安定だった。少しでも外敵に狙われたら倒れてしまう脆さがあったの。でもそうした過程を経て、自分と周りの世界を信じる勇気が持てたと思うわ」
理系で何事も白黒つかないと納得がいかない長嶺は現実主義者だったが、萌音の母、流川結子と別れるときには心の底から悩み、悲しみに打ちひしがれていた。
そんなときに、結子ならず長嶺の相談までものってくれたのは、他ならぬこの野瀬だった。
野瀬は看護師であり、助産師であり、カウンセラーでもある。
やや、スピリチュアルなことに重きを置く点が、若かった長嶺には理解できなかったが、離婚という人生の転帰に際し、大人の都合で謀らずとも子供である萌音を傷つけたやましさは消せず、その柔軟な考えに癒されることも多かったのだ。