一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
講師は最後にこう締め括った。

『恋をしよう、初体験を済ませよう、そうやって周りに影響を受けて焦ることがあるかもしれません。でも、それはまだあなたがあなたの運命の相手に出会っていないだけなのです。何年かかってもいいでしょう?本当の運命の相手に出会えるまで数年をやり過ごすことのどこが恥ずかしいのですか?』

と。

14歳の萌音は、その日を境に、他人と違う自分を受け入れ、周りに流されることはなくなった。

22歳の今もまだ運命の相手には出会えていないが焦ってはいない。

ギリシャ神話によると、割合は少ないが同性同士がくっついた人間も中にはいたという。

彼らがLGBTの起源だと言われ、なるほどと納得したものだ。

もしかしたら、萌音の運命の片割れは女性かもしれない。

高等部に進学し、スピリチュアルの本を読んだ。

そもそも、ソウルメイトという言葉は、古代ギリシャの哲学者、プラトンの思考がもとになったと言われている。

ソウルメイトが魂の友というのに対し、ツインソウルは魂の片割れ。

ツインソウルは、同じ魂から分かれそれぞれの性別は男女に限定されている。

男女の愛を学ぶために生まれてきた存在をツインソウルと呼ぶ。

゛恋愛とはツインソウルを探す旅゛

そんなことを真顔でいえば、夢物語だと人は笑うだろう。

萌音自身、それらを完全に信じているかといえば嘘になる。

だが、それを信じることで萌音は救われてきたし、今後も迷わずに恋を探すことができるだろう。

萌音が興味のない人に執着しないのも、誰に対しても媚びないのも、こうした思考がベースにあるからだ。

自分が落ち着けて、一緒にいて癒される人は自分のソウルメイトと信じて大切にしたい。

それだけで、萌音は自分の人生が豊かになり、自我が満たされるのではないかと思っていた。

会った瞬間に相手をじっと見てしまうのも、興味が湧いたらくまなく観察してしまうのも、相手を知りたいがための行動だった。

考えたら、今日も、初対面の夏田しのぶを観察しすぎて引かれてしまった。

彼女も第一印象は悪くない。

少なくとも害を及ぼすことで萌音に成長を促すカルマメイトではなさそうだ。

とにかく新しい職場は興味深い。

そう考えながら、萌音は重くなる瞼に堪えきれず、眠りの世界に誘われていた。

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