一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「はじまりは、そうね・・・。そこの洋輔さんかしら」

突然指を刺された道端洋輔は、驚いて自分を指差して首を傾げた。

「佐和田に黒い噂がたった途端、あなたの父親はさっさと佐和田を見限って佐和山建設にすり寄った。お陰でうちは一気に経営難に陥り、再建に必死になった父は家を省みず仕事の虫になってしまった。

お陰で、5年後には佐和田は復活を遂げたけど、私が小さい頃から婚約者と信じていた洋輔さんはM&A決裂後、私のことなど思い出しもせずにさっさと佐和田の娘と付き合いはじめて、しまいには結婚したわよね」

逆恨みとは正にこの事だと誰もが思っていた、佐和田以外は。

「だから、悔しくて、大学のミスコンだけは佐和山桜に勝ってギャフンと言わせてやろうと頑張ったわ。なのに桜は卑怯な手を使ってきて・・・」

桜がM女子大学4年生、佐和田が1年生の秋の文化祭のことだった。

「あの日、私を勝たせまいとした桜の取り巻きの1人が、私のスッピン写真を投票者に暴露して回ったの。あれさえなければ絶対に勝ててたのに」

「あの男と私には接点はなかったって何度も言ってるじゃない。そんなことで佐和山建設や洋輔さん、海音達にまで迷惑をかけないで」

ここでもまた、佐和山は巻き込まれただけの桜を逆恨みしていた。

「あんたが何て言おうと、あの男はあんたの手下だった。洋輔さんを奪って、更にはミスコンまで。どんだけ欲張りなんだよと思ったわ」

鼻で笑う佐和田はかなり思い込みが激しいらしい。

「それでも私は道端を、桜を無視して生きようと思ってた。近藤コンストラクションカンパニーという相棒を得て、佐和田産業も起動に乗ってきていたし。なのに、またも私のフィアンセである近藤駿太が別の女を好きになったから婚約を解消してほしいと言ってきた。お互い契約上の婚約者とはいえ、私は彼のことは嫌いではなかったわ」

なんとなく話が見えてきた面々は顔を見合わせて渋い顔をする。

「そんなとき、ムシャクシャして行った高等部の同窓会で佐和山海音に会ったわ。社会人デビューかよってくらいイケメンになってて、気になって近づいたら、こいつ、佐和山桜の弟だって言うじゃない。その上『運命の片割れとようやく一緒に働ける』って乳臭いこと言ってるじゃない?しかも、自称、その片割れは、流川萌音。近藤駿太の片思いの相手・・・」

「自称、じゃない・・・」

「海音、つっこむところ違うから・・・」

海音と風太郎の声が小さく響いた。

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