一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「道端桜です。インテリアコーディネーターです。夏田さん、そして流川さんもよろしくね」

五センチのピンヒールに、体のラインに添ったタイトなブラウスとスカート、完璧な化粧。

いかにもキャリアウーマンといった桜に、しのぶに続いて萌音もお辞儀をして

「よろしくお願いします」

と言った。

「佐和山海音、建築士です。どうぞよろしく」

桜から視線を移したしのぶは、明らかにうっとりしており、海音にときめいているようだ。

「よろしくお願いします」

だが、学生の時から、萌音はどんなイケメンだろうと惚れないし、怯まないし、媚びないことで有名だった。

ジッと見つめてくる海音を、同じようにジッと見つめ返す。

「え、えっと・・・、そんなに睨み合わないでもらえるかな。仲良く行こう」

萌音の大きな目は少しつり目で、ジッと何かを見つめると睨んでいるように見えるらしい。

それは、この目の前の男性も同じようだ。

゛まれに見る美形には違いないけど、仕事ができなければバディを代えてもらおう゛

だいたい佐和山という名字からして、姻戚の香りがプンプンする。

萌音は玉の輿や結婚退職を目指しているわけではない。

仕事をするために会社に入ったのだ。

新人の萌音がこんなイケメンのバディになったとわかったら、おそらく社内の全女性を敵に回すだろう。

ひとしきり睨み合った(観察し終わった)あと、視線を課長に戻す。

「それでは、後はバディについて業務を教わること。解散、解散」

矢野課長の一言で桜としのぶが動き出したため、その場には海音と萌音が残された。


< 4 / 187 >

この作品をシェア

pagetop