一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
取引先や契約者様宅での海音は完璧な建築士だった。

お客様のニーズや要望に答え、必要な書類を整えていく。

製図のラフもタブレットに落とし込んで提示するなど、仕事もスマートだった。

話の流れの中でうまく萌音に話を振り、相手先の信用を獲得させるなど敏腕セールスマンとしての動きにも卒がなかった。

「じゃあ、会社に戻ろうか」

気が付けば17時。

萌音の足も悲鳴をあげ始めていた。

満員電車の中、ギュウギュウと体を押し付けてくる学生や社会人の群れに押し潰されそうになる。

そんな萌音を両腕で囲って、さりげなくスペースを作ってくれる海音。

目の前では、大学生らしきカップルが抱き合っていちゃついている。

「隣のカップルめちゃ美男美女。うちら程ではないけどお似合いだね」

そんな言葉に萌音が目線を上げると、カップルの方の男性と目が合った。

不細工ではないが、ニヤリと笑って萌音を舐めるように見る男の顔にゾッとする。

゛なんかキモイ゛

萌音がそう思っていると、何故だが海音の身体で視界が遮られた。

「俺たちお似合いだってさ」

目線を上げると不機嫌な顔の海音と目が合う。

萌音が相手で不服ということだろう。

「ハイハイ。勘違いされたようでごめんなさいね」

「照れなくていいよ。萌音」

電車がカーブに差し掛かり、よろめいた萌音は海音の腕にしっかりと抱き留められていた。

思ったよりも筋肉質でビックリした。

萌音を支える腕も、血管が浮き上がり引き締まった様子は明らかに萌音のものとは違う。

「次で降りるよ。満員電車は嫌いだったけど、萌音と一緒なら悪くないね」

車掌が知らせる会社の最寄り駅の名前がアナウンスされると、スマートに萌音を庇いながら海音が出口へと先導してくれた。

繋がれた手から海音の優しさが感じられる。

゛おかしい。私、どうしてこんなにドキドキしているんだろう゛

萌音は、海音の手を振り払うこともせずに、駅の改札口まで手を引かれながら歩き続けた。

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