一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
佐和山建設本社ビルから歩いて10分ほどのところに萌音の住むマンションはある。

祖母からマンションを譲り受ける前までは、母親と一緒に郊外の一軒家に住んでいたが、母親である流川結子(るかわゆいこ)は、萌音の引っ越しを機に、あっさりとN大学美術学科の教授を辞めてフランスに移り住んだ。

萌音の父親は、言わずと知れたN大学建築学科の教授である長嶺安輝(ながみねあきてる)。

結子と安輝は萌音が小学6年生の時に離婚していた。

小さい頃から建築家になりたいと思っていた萌音は、将来、親の七光りと言われないためにも母親に引き取られ流川を名乗ることを選んだ。

両親の離婚の理由は゛価値観の違い゛

両親が離婚した当時は、その理由に納得がいかず悶々としていたが、今となっては

゛二人がツインソウルではなかった゛

のだろうと理解できる。

今でも友人としては仲がよく、お互いに様々なことを相談し合っている様子を見ると、二人はソウルメイトだったのだろうと萌音は思っている。

真っ暗な玄関をくぐり、萌音は室内灯のスイッチをいれる。

そのまま寝室に移動しベッドに倒れ込むが、昨日の二の舞はダメだと自分自身を叱咤激励する。

今日も昨日以上に色々なことがあった。

何よりも、うっかり近づきすぎた自分が招いた事態とはいえ、海音とキスをしてしまった。

男性の唇、いや、海音の唇は想像以上に柔らかく温かかった。

゛想像以上って、何も想像してなかったから!゛

萌音は自分の頭の中に謎の突っ込みを入れる。

抱き締められた手も、腕も、胸も全部、男らしくて逞しくて安心した。

゛だから、安心とか何なのよ!゛

とにかく萌音は混乱しているのだ。

海音が、萌音のツインソウルもしくは運命の片割れとは限らないのに色々とやらかしてしまっている。

゛っていうか、ツインソウルも運命の片割れもどうやってこの人だって証明するのよ?゛

萌音は、ここに来て根本的な問題にぶち当たってしまった。

萌音は慌てて起きあがり、゛ソウルメイトの見分け方゛というホームページを検索した。
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