一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
今日、出先で提案したり、契約が取れた内容をある程度形にしてから、海音は二駅先のマンションに帰宅しようとしていた。

そこは佐和山建設が所有する物件で、海音はその一室を父親から与えられていた。

もちろん、破格の値段ではあるが一応の家賃は払っている。

光熱費や共益費、管理費だって自分で払っている。

だが、立派さからいったら萌音のマンションの足元にも及ばないだろう。

会社の最寄り駅に向かう途中に萌音のマンションはある。

築20年らしいがモダンな外観は何度か外装の塗り替え工事をされていて、とても築年数が経っているようにはみえない。

N大学の長嶺教授の娘である萌音は、親の名声から七光りと揶揄されることもあるが、その実力は父親をしのぐとも言われ始めている。

母親はN大学の美術学科教授だった流川結子。

印象派に強く影響を受けた日本画家と言われる結子は、フランスでもその名を轟かせている。

芸術家の両親を持つサラブレッド。

そんなプレッシャーにも負けず、いつも萌音は実力だけで勝負しようとツンツンモードを炸裂させている。

萌音の住むマンションは、萌音が祖母から譲り受けた物件らしい。

斬新な彼女は、そこを活かした卒業課題に取り組んで見事に建築デザイン賞を受賞した。

長嶺教授立ち合いのもとで行われた公開展示の時に、海音もそのモデルルームを見学に行ったが、そのデザイン性と機能性の高さには言葉を失った。
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